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自分の「好き」と向き合うために、知らないまちへ飛び出したあの夏 >さとのば生 プロジェクトレポート #04



キャンパスを持たず、日本の各地で暮らしながら、オンライン学習や地域でのプロジェクト実践を通じて学びを深めていく「さとのば大学」。さとのば大学では、どんな人が、どんな想いで参加し、どんな学びや変化を得ているのでしょうか。


さとのば生のこれまでの歩みやプロジェクトを紐解く「さとのば生 プロジェクトレポート」。

第4弾は、2021年のさとのば大学「夏期特別講義」に参加した卒業生、かわむーこと川村彩乃さんに、これまでの学びの履歴についてお伺いしました。

今回は、2022年7月12日に開催したイベント「わたしたちの学び履歴(第2回)※」の内容をもとに、レポートしていきます。

※「わたしたちの学び履歴」は、過去のさとのば大学受講生をゲストに招き、これまでの人生における学び方や生き方の選択について語っていただく不定期連続トークイベントです。

イベントにてオンライン登壇するかわむー(右端)

 

受講生プロフィール


川村彩乃(かわむー)さん

神奈川県出身の大学3年生。

大学1年生の時に福島県に滞在したことをきっかけに、「他の地域にも行ってみたい!」と、さとのば大学夏季コースに参加。

石川県七尾市に滞在し、「自分」と「地域」の在り方を探求している。



好きな気持ちを確かめたかった

 

ーなぜさとのば大学を受講したのでしょうか?

きっかけは、大学1年生の時に1か月ほど滞在した福島県白河市にありました。私は白河という地域が大好きです。自分を受け止めてくれた地域の温かさに魅力を感じ、白河のためになるような活動がしたいと考えていました。


でも、地元の神奈川以外に長期滞在経験がない私は、「本当に、この地域のことが好きなのか?初めて来た地域だから愛着があるだけなんじゃないか?」と自信を無くしていました。だから、さとのば大学で日本のどこかの地域に1か月半滞在し、自分や地域と向き合ったら、白河以外のことが好きになったり、あるいはやっぱり白河が好きだと気付いたり、どちらにせよ何か考えが変わるのではないかと考え受講を決めました。




「見たことのない海が見たい」そう思い向かった七尾

 

ーさとのば大学の連携地域の中から選んだのはどこでしたか?

石川県七尾市です。でも正直なことを言うと、最初は島根県海士町での参加を希望していました。でもコロナの感染拡大で受け入れが中止になってしまって。急なことだったのでゆっくり決めなおす時間もなくて、「海の見える地域」で「行ったことのない場所」として決めました。


宮城県女川町には行ったことがあったので、宮崎県の新富町と石川県の七尾市で悩みました。どちらとも面談して、やりたいことをやってみる新富町とやりたいことを見つける七尾という印象を受けました。

当時の私はとにかく自分のやりたいことが何なのか知りたかったので、七尾を選びました。



ー七尾ではどんな風に生活していたのですか?

週に3日間は、午前中9時ー12時でさとのば大学のオンライン講義を受講します。それ以外の時間は本当に自由に過ごしていました。講義の予習復習、宿題をやったり、同じコースの友達とzoom繋いで話したり、さとのば大学の講義の延長をすることもありますが、もちろん現地での交流もあります。


七尾にはさとのば大学とは別に「能登留学」というプログラムで大学生が常に2名程度滞在していました。彼女たちと能登の美味しい海鮮を食べに行ったり、パンケーキを食べに行ったり、滞在先の家でお酒を呑んだり、自由に過ごしたりもしていました。

また、それ以外にも自分はオンラインで京都や福島の知り合いのイベントに参加したりもしていました。とにかく自由な時間が多いので、好きなように過ごすことができます。





「“私”になりたい私」との出会い

 

ーさとのば大学の講義ではどんなことを学びましたか?

お互いに「こよなく愛するもの」を語りあうことで、相手や自分について知ることのできる「偏愛マップ」や、相手が話したいことを聞き出すという、地域で必要な技術の一つを学ぶ「インタビューの仕方」についての講義。一人ひとりが自由なテーマで場づくりに挑戦する「ホスティングチャレンジ」も行いました。


中でも特に印象に残っているのは、「マイプロジェクト(通称マイプロ)」です。自分がほしい未来を実現するための第一歩としてマイプロ考えて実践し、最後の授業ではその成果を発表しました。



実は私は、七尾市の生活の中で、「自分って一体何がしたいんだろう」「なんで自分は自分なんだろう」と、存在価値があると思っていた自分を見失ってしまうアイデンティティクライシスを起こしてしまいました。

正直なことを言うと、今まで地域に行くと「横浜から来た」「女子大生」「青学生」など、肩書でちやほやされているような感覚があり、それを甘んじて受け入れている自分がいたことにも気づきました。


もっと私自身の本質を見てほしい。


「川村彩乃として」受け入れてほしいと強く思う一方で、その状況をうまく作り出せない自分に苛立っていました。

だからこそ私は、オンライン上で、顔も名前も知らない相手と対話を通して相手を知るイベントを企画しました。


イベントのチラシ


私が企画したイベントは、自分自身のことが相手に何も伝わらない状態、つまり「ナニモノでもない」状態で対話するものです。普段のzoomとは違って画面オフで、名前も本名と異なるという状況でしたが、少人数での対話を通して少しずつ相手を知っていくことで、「目の前にいる相手のことを、一体何で判断しているのか」を考えるきっかけとなるイベントとなりました。

参加者からも、「自分の人との接し方を振り返れた」という感想や「一緒のグループになった人の挑戦経験を聞いて、自分も頑張ろうと思えた」、「楽しく、かつ学びがあってすごく良かった!」等のコメントをもらい、自分の中のモヤモヤが社会に昇華されていく感覚がとても心地よかったです。



ー受講から1年経って思うことはありますか?

たくさんあります!(笑)

当時の私はまだ未熟で、七尾で地域の方に言われた言葉の半分くらい...いや、もっとかもしれないですけど、受け止められていなかったんですよ。でもそこで聞き流すのではなく、心にとめておいたからこそ今はわかるようになった言葉も多いです。


たとえば、

「何をしているかわからない会社がある地域こそ、良い地域」とか。


そう言われたとき、

「そんなわけあるかい!ちゃんとわかってもらえるまで説明するに決まってるでしょ!」

くらいに思ってたんです。でも、違いましたね。


地域に必要なものって物凄いスピードで変化するんです。例えば、去年の夏、七尾では高校生の修学旅行がコロナで無くなっちゃったんです。そしたら「オンラインで修学旅行やろう!」ってまちの大人が動き出して。


そんなこと、急に思いつかないじゃないですか。本気で向き合ってる人がたくさんいると、尚更です。ずっと同じことしている会社なんて、そのまちのことを変えようとはしていないんだと思います。何をしているかわからないというのは、常にその地域に必要なものをつくっているということなんですね。



あとは、

「お金に対して、シビアでいられる人ほどその地域のためになることを本気で考えている」

と言われた時も、納得いかなかったです。


当時は地方でお金儲けしたくない自分がいて、きれいごとばかり言ってたんです。

でも今は、地域の人にとって

自分たちのまちや生活は、お金を払ってでも知りたいと思う人がいるんだ

という実績が自信を持たせてくれるんだなって感じます。

お金儲けをしたいわけじゃないけど、お金が儲かるような仕組みは必要だなと思い直しました。

「ついに私、、、結婚します!!!!!!!!(笑)」


それから...

なぜそんなに地域のために頑張り続けることができるのか

そんなテーマについて考えることができたのも、自分にとって大きな経験でした。


地域っていいところもあればもちろん悪いところもあって、ずっと向き合うのってしんどいじゃないですか。嫌いになっちゃうんですよ。

私は自分の好きな場所を嫌いになっちゃうのが嫌だったんです。


なので、七尾のために毎日毎日朝から晩まで働く人に聞いてみたんですよ。そしたら

「要は、結婚だよ結婚」

って言われたんです(笑)



「好きとか嫌いとかもう通り越して、ずっと向き合うって決めるんだよ。私は七尾と結婚したの(笑)」

って。


聞いたときは、衝撃でした。(笑)

私まだ19歳だったんで、そもそも結婚って言葉にビビっちゃって。(笑)


でも確かに、「好きでいる」って、好きなところだけを知るってことじゃなくて、嫌いなところも受け入れるってことなんですね。七尾の人たちを見ていたらわかります。完璧なまちなんてないからこそ、少しずつ良くしていくしかないんです。

それが分かって改めて、私は「結婚しよう、白河と。」って思っちゃったんですよね。


で、七尾から神奈川の実家に帰る新幹線で、白河の知り合いに連絡して、7か月ぶりくらいに白河に行きました。向き合おうと思って




久々に行ったら、本当に楽しくて、胸を張って好きだなと言えるようになりました。同時に、嫌なところも全部含めて、白河の全部と向き合いたいって思ったんです。おこがましいですけど。(笑)


嫌になるときもありますけど、やっぱり好きなんですよね。白河の魅力は「私を私のまま受け入れてくれるところ」だと思ってます。白河にいるときの私は、他のナニモノでもない、「川村彩乃」なんです。そんな経験をしてほしくて、最近は3泊4日で大学生の滞在プログラムを組んだりしてます。

夏休みは、大学生のためのボランティアプラットフォームの設立に携わるべく、白河で働くつもりです。嫁入りです。(笑)


さとのば大学で過ごした時間の中で悩み続けた「自分として受け入れてもらえる場所」の存在は、きっと見つけるものではなく創り上げていくものだと思います。


悩みながらですが、そんな場所を創ることができるよう頑張っていきたいです。




終わりに

本記事を読んでくださった方、自身の学びの履歴を発表してくださったかわむー、ありがとうございました。


最後に、発表を終えたかわむーに感想を聞いてみました。


今回こうして振り返ってみて、私って色々考えて、悩んでいたんだなって気づきました。 そして自分を取り囲んでいたモヤモヤした感情たちが全部、今の私につながっていることも再確認しました。さとのば大学で、自分の強みと感じている社会に対する違和感を言語化して、私らしく生きる力を身に付けたなと感じます。これからもさとのばの講義や過ごした時間を忘れずにいたいと思います。(かわむー)

さて、さとのば生にそれぞれの学びと人生の歩み方を語っていただくトークイベント わたしたちの学び履歴」の第3弾は、8/9(火)に開催予定です!

次回もお楽しみに!

▼イベント詳細・参加申込みはこちらから: http://ptix.at/5S3oNn


現在、4年制大学としてさとのば大学に進学する「さとまなプログラム」(ネットの大学managara 地域イノベーターコース)の受講希望者を募集しています。また、夏休み・春休み期間には、さとのば大学の学びをぎゅっと凝縮した「短期特別講義」も毎年開講しています。

大学説明会や個別相談会も随時開催していますので、進路選択を考えている高校生や大学生、保護者の皆さま、教育関係者の皆さまなど、ご関心をお持ちの方はぜひお気軽にご連絡ください。


また、こちらのコラムではさとのば大学での学びとその価値や、学生がそれぞれに異なる自分らしさを見つけ、歩んでいく様子などを伝えていきたいと思いますので、ぜひ今後もチェックしてみてください~!




 

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